東京都交響楽団第619回定期演奏会
12月21日(火) 東京文化会館
指揮=ジャン・フルネ
ピアノ=伊藤恵
●ベルリオーズ:序曲〈ローマの謝肉祭〉
●モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番ハ短調
●ブラームス:交響曲第2番ニ長調
巨匠と呼ぶにふさわしい音楽家がまたひとり、ステージを去った。ジャン・フルネ、92歳、長い音楽人生を締めくくるラストステージに選んだのは、27年間にわたって濃密な関係を築いてきた東京都交響楽団の定期公演だった。近年全幅の信頼を置く伊藤恵をソリストに迎え、今年4月に正式結婚したミリアム・ジェイクス夫人も〈ローマの謝肉祭〉のコール・アングレのソロで華を添えた。すべてを理解し合った仲間だけが集った温かみあるアンサンブルが聴く者の心に沁 (し)みた。
ブラームスの最後の和音が鳴り終わった瞬間、ソロ・コンサートマスターの矢部達哉はじめ主だった楽員は、人前も憚らずボロボロと涙を流していた。巨匠に対する信頼、いや親愛がいかに深いものだったかがうかがえる感動的なシーン。客席も総立ちで大喝采を贈った。でも、当の本人はいつもと同じく淡々とした様子で万雷の拍手に応え、オーケストラへの賞賛のセスチャーを繰り返す。こんな雰囲気の中でもオーバーな感情表現をしないのがいかにもフルネらしいところ。最後まで凛としてノーブル、私たちが長い間、彼に対して抱いてきたイメージを少しも崩すことなくステージを後にした。
演奏は3曲ともかなり遅めのテンポだったが、明るくクリアな"フルネ・サウンド"は健在。これまで同様、最初の一音から都響の音をガラリと変えるマジックも披露してくれた。肉体の衰えからか途中、腕の動きがやや不明瞭になる場面もあったが、そこは巨匠の音楽作りを十二分に理解している楽員たちが渾身の熱演でカバー。特にブラームスでは矢部コンマスが大きな身振りやアイコンタクトで、オケ全体を引っ張り、必死に巨匠を支えようとする姿が印象的だった。
初来日は1958年、以来指揮したオケは都響はじめNHK交響楽団など13団体を数える。「ダ・カーポ(最初から繰り返し)」を連発し、厳しい練習で知られた巨匠だが、この日の演奏でも明らかなように彼の音楽に対する熱い思いは日本のオケマンの中に確かに根付いている。
(スポーツニッポン新聞社・宮嶋極)
12月 22, 2005 オーケストラ | Permalink
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