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2006年9月 6日 (水)

ザルツブルク音楽祭2006
モーツァルト:歌劇《ポントの王ミトリダーテ》

初日8月23日 レジデンツホーフ

指揮:マルク・モンコウスキ
演出:ギュンター・クレーマー
装置:ユルゲン・ベックマン
衣装:ファルク・バウアー

出演:
 [ミトリダーテ] 
リチャード・クロフト
 [アスパジア] ネッタ・オール
 [シファレ] ミア・ペルソン
 [ファルナーチェ] ベユン・メータ
 [イズメーネ] インゲラ・ボーリン
 [ローマの総督アルバーテ] パスカル・ベルタン

391_2  「モーツァルトオペラ22」をテーマの今年のザルツブルク音楽祭で最も充実していたのは、モーツァルトのオペラ・セリアのジャンルかもしれない。ミンコフスキ指揮、クレーマー演出の「ポントの王ミタリダーテ」はその代表的なものである。クレーマーは大司教館の中庭の仮設舞台という悪条件を幅2メートルもない前舞台の後ろに大きな鏡を設置する事で、かえって立体的で面白い効果を上げることに成功した。軽やかで躍動的舞台は実に爽やかで、最後の部分の適切なカットがこのオペラをすっきりしたドラマに仕立てて、一層生き生きした舞台となった。これはミンコフスキの功績。
 ポント王国は黒海の北にあってミトリダーテ6世はローマ帝国の強力な敵であった。物語は戦場のミトリダーテ(R・クロフト)が本国の長男ファルナーチェ(B・メータ)と次男シーファレ(M・ペルソン)の誠意を試そうと自分の死亡説を流すところから始まる。長男はローマの総督(P・ベルタン)と通じ、次男は父に誠実だが、王の若い婚約者アスパジア(N・オール)と愛し合っている。王は3人を厳しく罰しようとするが、戦いに傷つき死の間際に彼らを許すという筋である。
 前奏曲でモーツァルト時代の赤い衣装を着た仮面の人物が15人前舞台の上にはい上がってくる。それが鏡に映るのが効果的で、この意表をつく展開が観客を直ちにドラマに引き入れてしまった。「ミトリダーテは死んだ」と書かれている前面でファルナーチェ、シーファーレ、アスパージア、ファルナーチェの婚約者イズメーネ(I・ボーリン)が、この知らせが誤報だと知って起こす様々な反応がドラマの進行の原動力である。
 「もし、あなたが望むなら遠くへ去ります」と父の婚約者への叶わぬ愛の断念のもだえを吐露するシーファーレのアリアはペルソンの名唱でオブリガートのホルンと共にこの夜の白眉であった。ミトリダーテのアリア「慈悲の心は今もうない」と激しく息子達の裏切りを責める劇的表現も又優れたもので、クロフトはここでベテランの面目を見せた。その他のソリストたちとアンサンブル「ルーブル=グルノーブルの音楽家たち」の健闘を称えたい。それにしてもモーツァルトの才能のきらめきは何と素晴らしい事だろう。とても14才の少年の作ったものとは思えなかった。
(野村三郎/音楽評論家・在ウィーン)

PHOTO:
ザルツブルク音楽祭/ポントの王ミトリダーテ
ⓒ Klaus Lefebvre
Richard Croft (Mitridate)
Netta Or (Aspasia)
Bejun Mehta (Farnace)
Ingela Bohlin (Ismene)
Miah Persson (Sifare)
extras

9月 6, 2006 オーストリア |